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標準ミリタリーロジスティクスシステム

概要

SMLS-2020は美國およびその同盟軍の間で規格化された兵站C4Iである。ヒト、モノ、情報の流れである兵站を指揮統制するための管理システムだ。敵戦力を叩きのめす「シューター」は重要だが、シューターだけで戦争はできない。シューターは燃料や弾薬を消費するし、食事もする。また、シューターが叩くべき敵がどこにいて何をしているのかという情報の適切に収集・分析・配布も重要な要素である。最前線で戦争に勝つには、後方と最前線との間で兵站のフローを維持する必要がある。このシステムはいくつかの運用機関、サブシステム、兵站支援業務システムそしてキーデバイスから成る。

運用機関

国防兵站局

同盟軍を統括する最高部門として国防兵站局が設置される。この組織が一元的に全軍の兵站部門を束ね、物資の発注業務や納入された品物の管理などを担当する組織である。

統合軍輸送コマンド

国防兵站局によって調達された物資は、地域統合軍の輸送コマンドによって輸送される。輸送コマンドは輜重連隊、輸送艦隊、輸送航空隊などをフォースプロパイダとするタスクフォースであり、戦闘部隊の規模に応じて編成される。幕僚も任務に応じて陸海空海兵空挺の各セクションから派遣され、輸送作戦の立案と指揮は彼らを基幹とする輸送作戦局によって一元的に実践される。

統合軍整備コマンド

輸送コマンドによって運ばれた物資は消費されるか、消耗する。整備コマンドは別にあり、FEBAから100km程度後方に大規模な応急修理工場を構える。また、前線部隊の要請に応じて整備要員や機材、物資を調達することもこのコマンドの役割である。

このように、美國および同盟軍の兵站関連組織は「発注」「輸送」「整備・補修」を個々のセクションに分けている。同盟軍の規模が大きいこともその一因だが、基本的に「人命よりもモノを消費して戦争に勝つ」という考えが浸透していることが大きい。

空地分離ドクトリン

航空部隊には地上部隊や艦艇とは異なる特殊な事情がある。地上であれば、戦務支援部隊を伴って戦地に展開できるのが基本であり、特定の場所や施設に貼り付けられるのは、さらにその後方の補給所や整備工場などである。逆に艦艇では、それを支えるインフラが大きすぎて、戦務支援部隊の組織は特定の根拠地に貼り付けられる。戦地に展開するのは補給艦くらいだ。では航空部隊はどうか。航空部隊の整備部隊を属地主義的に配備するドクトリンである。国防に専念して外国には一切出ません、といったドクトリンであれば、支援部隊と飛行隊を紐づけてしまった方が、業務の円滑化の面ではアドバンテージになりうる。しかし、実際に航空機を運用する飛行隊が海外派遣などであちこちの飛行場を飛び回る運用になってくると、事情も違ってくる。道路や民間飛行場などを利用して基地施設の分散化を図る場合も同様で、本来の所属基地以外のところに航空機を下ろすことになったら、そこに運用支援のための人員を送り込む必要がある。
そこで出てくる考え方が「空地分離」である。大規模な整備・補修、兵站支援、飛行場やその他の基地施設の運用管理などをする部隊と、実際に飛行機を飛ばす部隊を分けてしまう方法だ。こうすれば、飛行隊はある基地から別の基地へと移動しつつ、それぞれの基地に固定配備されている支援部隊の協力を受けながら任務を遂行できる。

軍用パレット

全軍のすべての輸送は463Lパレットを用いて行う。完全に規格を統一することで兵站支援業務が効率化される。このサイズのパレットに載らない重量物(軍用車両、航空機のエンジンやコンテナイズされた貨物など)は別ルートで運ぶが、それらは数が限られてくるため、トレーサビリティの向上にも繋がる。パレットの重量は161kg、積載制限は4545kgである。

RFID

軍事作戦で必要とされる大量の物資を輸送・集積するには、運ぶ際にも、運んだ物資を保管しておく際にも、それを前線まで送り出して交付する際にも、相当な負担がかかっている。この負担を軽減しつつ作戦工藤に支障をきたさないためには、使った分だけ必要になったタイミングで補充するのが理想的だ。
ただし、戦場では「摩擦」がつきものゆえ、すべて計画通りに補給できると考えるのはリスクが大きすぎる。なにがしかの余裕が必要だが、その余裕をどこまで切り詰められるかが問題である。使った分だけジャストインタイムで補給するにはどうすれば良いか、それには以下の情報が必要となる。
・どこで誰がどれだけの補給物資を必要としているか
・補給物資の請求に対して、所要の物資を送り出す手配ができているか
・送り出した物資の配送状況
これらの情報の指揮統制の鍵となる技術がRFIDである

貨物輸送におけるRFIDのメリット

貨物を輸送する際にはパレットに載せているので、それぞれの貨物に対してのなにがしかの梱包は必要だ。そこで問題になるにが、そうやって梱包した個々の荷物について「何が入っているのか、それを請求したのは誰か」を識別する手段である。一般的にこの識別にはPOSシステムでもおなじみのバーコードを使う方法がある。品物にバーコードを貼り付ける一方で、どの品物にどのバーコードを貼り付けたかを記録しておけば、バーコードをリーダーで読み取って照合することで中身の把握が可能になる。しかし、バーコードでは光学的に読み取りを行うのでいちいち品物に近づいてリーダーを当てて読み取り作業を行わなければならない。これでは貨物が大量にあるとバーコードの読み取りだけで手間がかかってしまう。
そこでRFIDが登場する。バーコードはレーザーを用いた光学的な読み取りシステムだが、RFIDは電波を介してやり取りするから、いちいち貨物の横まで人間が出向かなくても良い。RFIDは民間分野ではすっかり浸透している技術で、鉄道やバスなどのIC乗車券として活用されている。ICカードでは使用する電波の出力が弱いため、読み取り装置にタッチしないといけないが、RFIDは電波が届く範囲なら離れたところから読み取りができる。さらに、RFIDには書き換えと再利用が可能というメリットがある。
ただし、貨物にRFIDをつければ問題解決と言うわけではない。それだけでは、ここの貨物の中身を識別する手段ができただけである。RFIDごとに書き込んだ固有の識別情報と、発送した貨物の内容をコンピュータに入力して、必要に応じて照合できるようにしなければ、貨物の中身や行き先を把握する役には立たない。また、RFIDから読み出したデータのやり取りについては、当初はディスクに書き込んだデータを手作業で運んでいたが、これではデータが届くのに時間がかかってしまいRFIDの効果が原撮されてしまう。そこで美國ではネットワーク化を図り、統合軍専務支援システム:JCS3を導入した。これを前線部隊とのネットワークと連携すれば、補給物資の発注や発注した補給物資の輸送状況に関する紹介が可能になる。さらに受発注や契約に関するシステムとも隣接すれば「請求→発注→納入→輸送→交付」と言うフローを実現できる。

同盟軍の共同作戦におけるRFIDの運用

RFIDを導入する上で問題になるのは、複数の軍種が共同で作戦を行う統合作戦、または複数の国が共同で作戦を行う連合作戦だ。ある国の特定の軍種だけがRFIDによって輸送任務を効率化しても、よそが旧態依然んお兵站フロー管理システムのままでは効果が薄い。また、インターオペラビリティの面でも問題がある。この問題を解決するには、異なる軍種同士、あるいは同盟国同士で、以下の項目について統一を図り、共通化したシステムを実現する必要がある。
・使用するRFIDそのものの規格
・RFIDから取り出したデータの扱い
・使用する品目や数量などのデータをRFIDに書き込む際のデータの記述形式
・品物の発送元や宛先をRFIDに書き込む際のデータの記述形式
例えばの話、同じコードの番号が、国や軍種によって異なる品目に割り当てられていたら混乱の原因となる。弾薬を請求するつもりでいたら、届いたのがオレンジジュースだったというのではお話にならない。そこで美國では、RFIDに関する標準化仕様(SMLS−2020U)を規定している。

Sense and Renponse法による整備と補給

円滑な兵站フローの実現について、もう1つ大きな課題がある。すなわち、必要な物資あるいは整備作業などに関する情報の把握である。もちろん、前線から請求してきた通りのものを送り出したり、故障や不具合の報告が発生した時点で対処したりという考えからもあるが、それでは対処が受け身で後手に回りやすい。
そこで先手を打って「使ったものだけを送り出す」「不具合の発生を早期に検出して手を打つ」といった方法を採れば、もっと効率が良くなるかもしれない。いつも、リアルタイムのデータを把握して(Sense)、それを受ける形で(Response)兵站任務の計画を行うためのシステムということになる。こうしたシステムの多くは後付けのオプションとして提案されているが、ユニットの開発と並行して平坦支援のシステムまで作ってしまおうというのが美國の考え方である。主力戦車クーガー、主力戦闘機シャハドなどに設置されたヘルスモニタリングシステム(HMS)からフィードバックを受けて補給装備品を発注するシステムとして統合軍自動兵站情報システム(JALIS)である。クーガーでは、装備するコンポーネントの大半にセンサーを取り付けてあって、それを利用することで故障の発生を把握できる。さらに、そのデータをデータリンクによって地上側にも送信する。こうすれば、戦車が任務を終えて帰ってきた時点で既に、車体の状態やトラブル・損傷の状況を補給場側では既に把握できている。ものが手元にあれば、車両が帰還した時点で交換用の部品もしくはれ列線交換ユニットを待機させておくことも可能である。

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