君も国家を運営しよう。

灰色の瓦礫の山、そして暗い雲。私は毎日のように馴染みの店に行ったが、やはり爆風で店は全壊していた。
帰ろうとした時、
「おーい」
と誰かが声を掛けるのが聞こえた。ふと振り返ると、馴染みの店主だった。
「生きてましたか!あれは昼のことでしたから、丁度営業中だったかと」
「ええ、営業中でしたよ。幸いにも地下の食糧庫にいたので爆風はあまり来ませんでした。まあ瓦礫が食糧庫に入ってきて出るのには時間かかりましたけど」
「私は偶然郊外にいたので助かりましたけど、ベオグラードの学校で働いていた私の25の弟は行方知らずです。でも必ず生きて帰ってきてくれると信じています...」
その後小話をして店主と別れた。その後しばらく歩いて今は野営の病院となった地下鉄ゲオザヴォド駅を過ぎて中心部に入り、サバ川の畔に来た。しかし、中心部はどこに行っても瓦礫の山。ラヴァシの公会堂に数人の男女が座り込んでいた前には男が一人横になっている。それを見て、彼らの日常は幻滅したのだなと思った。しかし、あれほどの瓦礫の山と遺体の数々を見ていても、私は弟の生存を確信していた。
弟の働いていた小学校の前に来た。正門は破壊されていて灰色の瓦礫となっている。弟が担任をしていた学級のある北校舎の中へ入ると、事務の人だろう、私を出迎えてくれた。
「親御さんですか?」
「いや、ここで働いているアルヴィスの兄です。弟は...?」
「あー、彼ですか。良くあなたのことを話してましたね。確かマルコさん?」
彼女の言葉に勢いが無くなったのを感じ取れた。
「ええ、そうです。でアルヴィスはどちらに?」
「...はい。こちらへ。」
そういって事務員は校庭に出た。私も後に続いた。
事務員は西校舎に入って、二階に登り、講堂に入った。そこには沢山の棺があった。事務員は一番前の左から3番目に"Арвис Јековић"と名前のある棺の前で止まった。
「彼、落とされたときは体育の授業中をしていたんです。恐らく熱線で即死だったかと...」
棺を開けられた時、私の願望は幻滅した。そこにあったのは上を見上げたまま炭化した弟だった。彼が最後に見たのはキノコ雲だろうか、それとも子供たちだろうか。
涙は何故か出なかった。弟を失った喪失感が私を取り巻いている筈なのに。
遺体は後で受けとると話した私は小学校から出、セルビア鉄道が臨時運行しているバスに乗るべくベオグラード中央駅に向かった。

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